サイトアイコン NFT Media

【独自取材】ハードウォレットから決済手段へ|Tangem中村文昭氏が語る転換点

※当サイトには広告が含まれます。

暗号資産を「厳重に保管するもの」から「日常的に使う決済ツール」へ。ハードウェアウォレットのTangem(タンジェム)がいま、大きな転換期を迎えている。

USB接続型が主流の市場において、カード型やリング型といった独自のアプローチで存在感を増すTangem。2017年の設立以来、NFCタップで完結する手軽さと高い安全性を両立してきた同社が今、特に力を注ぐのが「Tangem Pay」だ。

アプリ内でVISAバーチャルカードを発行し、Polygon上のUSDCをそのまま日常の支払いに充てられるこの機能は、セルフカストディの役割を「保管」から「決済」へと劇的に拡張させようとしている。

今回はTangemのアジア太平洋地域を担当する中村文昭氏に、決済へのシフトを図る「Tangem Pay」の狙いや日本市場での展望、そして昨今の業界動向を踏まえた同社のセキュリティ設計についてお話を伺った。

【プロフィール】
中村文昭(なかむら ふみあき)
Tangem APAC Business Development Manager

スイスに拠点を置くハードウェアウォレットメーカーTangemにて、アジア太平洋地域の事業開発・マーケティングを担当。
2025年よりアジア市場をメインに、日本を含む各国でのパートナーシップ構築、リアルイベントの企画・出展、コミュニティ施策の推進などに従事している。

カードとリングのハードウェアウォレット

NFTMedia編集部(以下、編集部):まず、Tangemとはどのようなハードウォレットなのかを教えてください。

中村文昭(以下、中村):ひとことで言えば、暗号資産をオフラインで保管するためのコールドウォレットです。

ただ、一般的なハードウェアウォレットと大きく違うのが形状で、Tangemはカード型とリング型を採用しています。電池もケーブルも充電も不要で、NFC対応のスマートフォンにかざすだけで、取引の署名やウォレットの設定変更ができます。2017年のローンチ以来、600万枚以上のカードが流通していますが、ハッキング被害は1件も出ていません。

編集部:どのような特徴があるのでしょうか。

中村:特徴として、2枚組・3枚組のカードとして販売されている点が挙げられます。

それぞれのカードに同じウォレットが保存されていて、物理的なカードそのものがバックアップになります。ですので、いわゆる12単語のリカバリーフレーズを書き留めておく必要がありません。もちろん、希望される場合はシードフレーズを生成することもできますが、Tangemとしては生成しない方法を推奨しています。

また、対応範囲として90以上のブロックチェーン、16,000種類以上のトークンを管理できます。

コールドウォレットから「日常の決済ツール」へ

NFTMedia編集部(以下、編集部):マーケティングチームの組織体制について、お聞きします。中村さんはアジア地域のマーケティングを担当されているのでしょうか。

中村:そうですね。今、Tangemは主なマーケットとしてアメリカ、EU、中東、アジアに展開しています。その上で、2025年から私がアジア地域を担当しています。

編集部:中村さんは日本のイベントにもTangemの窓口として出席されていますよね。直近では、どのような活動に注力されていますか。

中村:Tangem自体はハードウェアウォレットのブランドとして展開しているので、コールドウォレットの必要性を世の中に訴えていく活動はこれまで通り続けています。

2026年時点でのアップデートという意味では、「Tangem Pay」のプロモーションに注力していますね。

編集部:「Tangem Pay」とは、どのようなサービスなのでしょうか。

中村:Tangem Payとは、VISAカードをTangemのアプリ内で使えるサービスです。

本人確認をしたあとに、アプリ内でVISAブランドのバーチャルカードが発行される仕組みとなっています。PolygonネットワークのUSDCでの支払いが可能で、VISA加盟店であればどこでも決済ができる商品になります。

編集部:ハードウェアウォレットのUSDCから引き落としが可能ということでしょうか。

中村:おっしゃる通りですね。Tangemのアプリ内で指定されたUSDCのアドレスにチャージすると、そのまま決済額として使える仕組みです。

編集部:どのような背景で「Tangem Pay」が誕生したのでしょうか。

中村:背景としては、ブロックチェーン業界全体が決済領域へとシフトしている傾向があるためです。つまり、トークンを資産保全のための選択肢から、日常的に使える支払い手段として浸透させていくフェーズにあるため生まれました。

決済で儲けないという設計思想

編集部:「Tangem Pay」では、キャッシュバック率が変わる「TIERプラン」も導入されると伺いました。

中村:はい。バーチャルカードだけであれば会費無料でお使いいただけるのですが、毎月課金いただくことで特典を得られるプランも準備中です。

いわゆる一般的なクレジットカードですと、初期費用であったり年会費であったり、TIERランクごとに費用がかかる場合も多いと思います。一方でTangemでは基本的に手数料が発生しないので、かかる費用はFXの手数料だけですね。つまり、USDCを他の銘柄に変換したときに1%ほど手数料が必要となる仕組みです。

編集部:クレジットカードなのに、手数料が発生しないのですね。

中村:そうです。一般的なクリプトカードでは、手数料が重要な収入源となります。

これに対してTangemの場合、Tangem Payでそこまで大きな収益を得る必要がないので。このようなビジネスモデルを実現できました。

編集部:「Tangem Pay」に関して、対応エリアを教えてください。

中村:アメリカなど主要な国では対応していますし、アジア地域に関しても順次拡大していく予定です。具体的には、日本やマレーシアやタイ、パキスタンといった国も追加されました。

対応するエリアが増えれば、「コールドウォレットでクレジットカードが使える」という体験が多くの人に広まっていくと考えています。

カード型・リング型でライトユーザーをターゲットに

編集部:日本で展開していく上で、どういったところがTangemの強みになるとお考えでしょうか。

中村:まず、Tangemと競合製品との違いは何なのかを伝えることが、いちばん重要なポイントだと考えております。

基本的なことではあるのですが、他社のハードウォレットはいわゆるUSB型で、パソコンに接続する商品です。これに対してTangemはカード型、そしてリング型で、スマートフォンにタップしてスキャンする仕組みです。

まずは、この基本的な違いをPRする必要があると思っています。

編集部:なるほど。ユーザー層にも違いがあるのでしょうか。

中村:そうですね。Tangemのターゲット層は、はじめてビットコインを買ったような方です。あるいは、投資はしているけれど、毎日チャートをチェックすることはない、といったライトユーザーもターゲットにしています。

パソコンで日々チャートを眺めるようなトレーダーであれば、USB型のウォレットは便利です。ただ、大部分を占めるライト層のユーザーはスマホのアプリで管理すれば十分というところがあって、このような用途にはTangemが適しています。

ハードウェアウォレットでの漏洩事件とシードレス設計

編集部:2026年7月には、他社製ハードウェアウォレットで暗号資産が流出する事件が起きました。これは乱数の生成方法に問題があったと言われています。

Tangemでは、どのような形で乱数を生成しているのでしょうか。

中村:まずTangemの仕組みを簡単に説明しますと、カードにもリングにもセキュアエレメントのチップが組み込まれています。これをスマートフォンにタップすると、秘密鍵が自動で生成される仕組みです。

Tangemの秘密鍵はEAL6+(評価保証の基準)の認証を取得しており、高品質な乱数生成機能を使って作られていますので、その点はご安心いただいて大丈夫です。

実際に、サービス開始以来ハッキングやデータリークの被害も発生していません。

編集部:今回の事件は、シードフレーズが推測されやすかったことが間接的な原因のようですね。一方でTangemでは、シードフレーズを設定せず、物理的なカードを通じてバックアップできる仕組みもあると聞きました。

中村:はい。Tangemの大きな特徴の一つとして、シードフレーズそのものを生成するかどうかをユーザーが選べるようになっています。そのうえでTangemとしては、シードレスを推奨しています。

理由としては、Tangemのカードは1枚組ではなく、必ず2枚組か3枚組で販売されるからです。リングを購入した際も、必ず2枚のカードがついてきます。こうすることで、シードフレーズに頼らず物理的なカードをバックアップとして用意したうえで、シードフレーズを生成するかどうかをユーザーが決められるわけです。

編集部:そもそもシードフレーズがない状態でも運用できるのですね。

中村:はい。私個人としてもシードレスを強く推しておりまして。というのも、ハードウェアウォレットに保管した資産をなくしたり盗まれたりするのは、実はシードフレーズによるところが大きいんですね。

そのため、シードレスはとても便利な機能だと思います。

6〜7割がハードウェアウォレットを知らない

編集部:日本マーケットにおけるTangemの現状を教えてください。

中村:現在の日本における立ち位置としては、やはり競合であるLedgerやTrezorが強い状況です。そのなかで、Tangemも徐々にユーザー数を伸ばしてきました。

Tangemとしては、初級から中級者をターゲットとしてマーケティング活動をしています。

ブロックチェーン業界に関係なく、世界全体として投資に関心を持つ傾向が強くなっていますよね。このような背景があるので、日本でも暗号資産に興味を持つ新規の方が増えてきている印象を受けますね。

編集部:初級から中級者向けにマーケティングを展開されているのですね。

その上で、課題になっている点はありますか。

中村:そもそも、「ハードウェアウォレット」という概念が一般の人に浸透していない点ですね。暗号資産を購入したことがある人でも、おそらく6割から7割の方は知らないと思います。

そのため、リスク分散のための手段の一つとして、ハードウェアウォレットを啓蒙していくことが重要だと思っています。

編集部:具体的には、どのような方法でハードウェアウォレットの重要性を広めていくのでしょうか。

中村:暗号資産の初心者、中級者向けに露出を増やしていきます。

施策の一つがリアルイベントや一般消費者に向けた展示や販売を今後考えていますです。これまではブロックチェーン系のイベントを軸として出展していましたが、今後はより一般の方の目に触れる場所でも商品を展開していきます。

編集部:一般の人にハードウォレットを知ってもらう施策ですね。暗号資産の保管から決済へとマスアダプションが進みそうですね。この度は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

インタビューを終えて

印象的だったのが、コールドウォレットの役割に対する根本的なパラダイムシフトである。暗号資産を金庫のように「厳重に保管しておくもの」から、Tangem Payによって「持ち歩いて日常的に使う決済ツール」へと昇華させようとする姿勢が強く伝わってきた。

一般的な暗号資産決済にありがちな高額な手数料構造に依存せず、日常の支払いに溶け込ませる設計思想は、まさにブロックチェーン技術のマスアダプションを次のフェーズへと引き上げる鍵になるだろう。

ステーブルコインや暗号資産決済をめぐる国内の議論が成熟していく中で、Tangemがもたらす新しいWeb3体験が身近なものとなる日はそう遠くないと感じさせられた。

関連リンク

暗号資産・NFTの取引をこれから始めたい方には、GMOコインの口座開設がおすすめです。

GMOコインのおすすめポイント
  • 国内最大級の銘柄数を取引できる
  • 入出金や送金など各種手数料0円
  • ステーキングやつみたて、IEOなど豊富なサービスを展開

現在GMOコインでは、暗号資産を購入することで、毎日10名に現金1,000円が当たるプログラムを実施中です。

プログラムの参加手順は以下の通りです。

  1. 下のボタンからGMOコインにアクセスし、口座を開設(無料)
  2. 口座開設/ログイン後、販売所で暗号資産を500円以上購入、または「つみたて暗号資産」で暗号資産を1回以上購入
  3. 毎日抽選で10名に現金1,000円をプレゼント!当選結果は会員ページで確認可能

毎日抽選で10名に当たるチャンスですので、興味のある方はぜひ参加してみましょう。

モバイルバージョンを終了