クリプトデバイドとは

クリプトデバイドとは、クリプト(暗号通貨)の世界で活動する人たちと、そうでない人たちの間の大きな隔たりのことを意味します。その隔たりは、デジタルデバイドと呼ばれる、デジタルデバイスを使いこなせる人とそうでない人との隔たりよりも遥かに大きく、(この記事を書いている2022年4月の時点では)簡単には乗り越えられない大きな壁として、存在しています。

最初に私がこの言葉を使ったのは、メルマガ「週刊 Life is beautiful」の4月12日号ですが、メルマガのままだと一般の人の目に触れないので、ここに貼り付けておくことにしました(Wikipedia に載せる際は、この記事へのリンクを貼っていただければ、自由に引用していただいて結構です)。

先週の土曜日に、「まぐまぐライブ」でユーチューバー(56万サブスクライバー)として有名な「マナブ」さんと対談をしました。マナブさんは、大学卒業後にフィリピンで就職し、その後フリーターとなって Youtube やブログで稼ぐようになり、今はドバイ籍の会社を経営しつつバンコクで暮らしているという、とても興味深い生き方をしている方です。

対談の中で知ったのですが、彼はYoutubeやブログで稼いだお金はすべてすぐに暗号通貨に変えてしまっているそうです。結果として、「財産の大半が暗号通貨であり、どこの政府も彼の財産を把握出来ていない状況」になっているとのことです。

これまで暗号通貨やNFTに投資をしている人には大勢会って来ましたが、「財産の大半を暗号通貨として持っている」人に会ったのは初めてです。「来るべき時代が来つつある」と強く感じました。

何年か前に、「デジタルデバイド」という言葉が流行りました。スマホやパソコンなどのデジタルデバイスを上手に使いこなせる人たちと、そうでない人たちの間に、大きなギャップが生じていることを示した言葉ですが、それが今やクリプト(=暗号通貨)に関して起こりつつあるように思えます。

それは「クリプトデバイド」と呼ぶべき現象で、マナブさんのように、財産の大半をクリプト資産として持ち・運用する人たちと、そうでない人たちとの間に大きなギャップが生まれつつあるのです。

近いうち、収入も支出もすべてクリプトで行うことが可能な時代が来るでしょうから、そうなると、ドルや円の経済圏とは全く別のところに、「クリプト経済圏」のようなものが生まれてしまうことになります。

しかし、その状態は、既存の政府にとっては全く好ましくないことなので、政府側はなんとかしてそんな人たちから税金を徴取しようとするでしょうが、簡単ではないと思います。Coinbase のような委託型のウォレットであればまだ把握出来ますが、Metamask などを使った独自ウォレットを持たれてしまっては、把握のしようがありません。

最終的には、そんな経済圏を前提にした国(クリプト国家)が作られ、マナブさんのような人はその国のパスポートを取得して、自由に生きる時代が来るのだと思います。

実際に、そんな国が作られたら、マナブさんは、すぐにでもパスポートを取得するそうです。こんな風に明らかにニーズがあるケースでは、それに対する答えが提供されるのも時間の問題なので、あと10年もしないうちに「クリプト国家」が出来てしまう可能性も十分にあると思います。

日本政府は、伊藤穰一氏をアドバイザーに招いて、Web3 に関連する法整備をするそうですが(「Web3.0戦略を成長戦略の中心にすべき」自民党の塩崎議員、財務金融委員会で質疑)、政府には「日本企業がNFTを発行しやすくする」などの直近の問題に目を向けるだけではなく、「本格的な Web3 の時代になると、個人の所得や財産を政府が把握出来なくなる」「そんなクリプト・ネイティブな人たち向けの独立国家が作られてしまう可能性がある」などの、国や通貨や税金のあり方の根本を問われる大きな問題を真正面から捉え、どう対処するかを考えて欲しいと思います。

クリプトの世界への入り方には、何段階かあります。

レベル1:暗号通貨取引所にアカウントを持ち、Bitcoin や Ethereum などのメジャーな暗号通貨を購入・保有している
レベル2:Metamaskなどでウォレットを自分で管理し、それを使って、NFTを購入・保有している
レベル3:NFTを活用した Play2Earn ゲームを遊んだり、DAO に参加している。朝の挨拶は gm。
レベル4:財産の多くをクリプト資産として運用し、それで食べていけるのでは、節税のために別の国に住むべきではないかと、真剣に考え始めている。
レベル5:財産の大半をクリプト資産として運用し、課税を避けるためにシンガポールやデュバイに暮らしている

ちなみに、クリプトの世界に入り込むことを英語では、"go down the rabbit hole" と呼びますが、これは「不思議の国のアリス」の主人公が、ウサギを追いかけて不思議の国に迷い込んだストーリーからの引用です。クリプトの世界が、いかに摩訶不思議で魅力的な世界かを、とても上手に表しています。

私自身も、NounsDAO というDAO(ソフトウェアを使って自律的に運営する組織)に参加し、最初のプロジェクトとして、"Nouns Art Festival" というオンライン映画祭を立ち上げたばかりです(参加者を絶賛募集中です)。まさにウサギを追いかけて、不思議の国に迷い込んだアリスになった気分です。

転載元:https://note.com/lifeisbeautiful/n/n582db23d414f
作者:中島聡