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株式会社セブン銀行と東急電鉄株式会社、SUSHI TOP MARKETING株式会社の3社が、NFTを活用したデジタルスタンプラリーの取り組みを進めている。
この企画において特徴的な点が、セブン銀行のATMからNFTが手に入る仕組みだ。ATMでの交通系ICカードへのチャージを起点に利用者がNFTを受け取り、謎解き形式で決められたスポットを巡る。ATMを起点としてユーザーに新たな行動を促す仕組みだ。
なぜ、金融業界のセブン銀行がATMを使ってNFT施策に取り組むのか。今回は、企画の背景や狙い、そして全国のATMを生かした今後の展開について、セブン銀行でNFT関連施策を担当する山方大輝氏に話を伺った。
【プロフィール】
山方 大輝(やまがた だいき)
株式会社セブン銀行 セブン・ラボ 調査役
セブン銀行にて、NFTをはじめとするブロックチェーン技術を活用した新規事業・マーケティングソリューションの企画・推進を担当。
ATMでスタンプラリーを始めた理由とは
NFTMedia編集部(以下、編集部): 「東急線のスポットを探そう!デジタルラリー」の企画では、セブン銀行と東急電鉄、SUSHI TOP MARKETINGの3社が参画しています。
この3社が提携することになった経緯を教えてください。
山方 大輝氏(以下、山方):もともとは、SUSHI TOP MARKETINGが先行して東急電鉄とNFT施策に取り組んでいました。
この案件とは別に、当社は2023年にSUSHI TOP MARKETINGと『NFT募金』という企画で初めてコラボレーションしています。その後、SUSHI TOP MARKETINGから東急電鉄をご紹介いただき、協議を重ねて2025年9月に3社のプロジェクトとしてデジタルスタンプラリーの第一弾を実施した流れです。
編集部:今回のデジタルスタンプラリーでは、セブン銀行のATMからNFTを入手できますよね。ATMを現金の入出金以外にも活用する発想は、どこから生まれたのでしょうか。
山方:セブン銀行ATMは入出金以外にも、本人確認や各種手続きなどで日常的にご利用いただいていますが、取引ごとに接点が完結するサービスでもあります。そのため、お客さまがどのような体験に魅力を感じているのかを知る機会は限られていました。
そこで、ATMを起点に新たな体験を提供しながら、お客さまの反応を知る取り組みに可能性を感じました。
編集部:そこでNFTを使おうと考えたわけですね。
山方:そうですね。個人情報を取得しない形でお客さまの行動を知ろうとすると、NFTとLINEの友だち登録を組み合わせたキャンペーン設計は相性がいいのではないかと考えました。
スタンプラリーやキャンペーンをきっかけにATMを使っていただき、その後の行動までつなげていく。そうした使い方ができるのではないか、というのが起点です。
第一弾で見えた手応えと課題
編集部:2025年9月に開催された第一弾の企画「ATMでチャージして東急線でお出かけしよう!デジタルラリー(※)」では、7,000枚以上のNFTが配布されたそうですね。
参加者からの反響はいかがでしたか。
※2025年9月29日プレスリリース 「ATMでチャージして、東急線でお出かけ しよう!デジタルラリー」を実施します
山方:アンケートでは、総じてポジティブな反応がありました。SNSでも、少数ながら「革新的な取り組みだ」と評価する声がありましたね。
特にありがたかったのは、「こう改善した方がいいのではないか」と提案する、熱量の高いユーザーがかなり多かった点です。
編集部:配布数については、想定以上だったのでしょうか。
山方:想定よりは発行されたと思っています。
ただ、一方でまだ伸びしろはあります。NFTを受け取る段階で離脱されている方も数値として確認しているからです。
受け取り方法をより円滑にすることで、参加者を増やせないかと東急電鉄とも改善を進めているところです。
NFTと気づかなくても参加できる仕組みに
編集部:実際にATMからNFTを入手できる仕組みを導入し、どのような手応えがありましたか。
山方:個人のお客さまについては、おそらく7〜8割くらいの方はNFTであることに気づかず受け取ってくださっているのではと考えています。
これまでは「NFT」をプロモーションのキーワードとして前面に押し出す事例も多かったと思いますが、我々は逆です。NFTであると極力、主張せず、普段のスタンプラリーに参加している感覚で自然と受け取っていただきたいと考えていました。
その結果として、「NFTとは何なのか」といったお客さまからのお問い合わせは、当社のコールセンターなどにもほとんどありませんでした。
編集部:システムの裏側でNFTを活用する仕組みですね。NFTを使うことで、企業側にもメリットはありましたか。
山方:はい。今回の仕組みでは、NFTやウォレットに個人情報は含まれておらず、当社が確認するのもウォレットアドレスと、そのアドレスが所有しているNFTだけです。そのため、情報管理や社内確認の負担を抑えることができました。
個人情報を共有しない設計だからこそ、東急電鉄・セブン銀行・SUSHI TOP MARKETINGの三社での情報共有が容易であり、通常であれば情報共有の環境準備だけでも数カ月かかるところ、企画の準備から実施まで1カ月半もかかりませんでした。
これは金融機関が展開するプロジェクトとしては、かなり早い方だと思っています。
第二弾は謎解き・EC・リアルイベントへ
編集部:2026年9月から開催される第二弾の企画(※2)では、第一弾からどのような点を進化させたのでしょうか。
※2 2026年9月4日プレスリリース 「東急線のスポットを探そう!デジタルラリー」を実施します
山方:オフラインとオンラインを行き来する導線を加えたことです。
第一弾は、特定のスポットを巡っていただく比較的シンプルなスタンプラリーでした。これに対して第二弾ではATMで交通系電子マネーをチャージしてNFTを受け取っていただき、それをヒントに謎解きのような形でスポットを巡ってもらいます。
さらにコンプリートした方は、東急電鉄の公式オンラインショップ『TOKYU STYLE』の特設サイトで、『8500系NFTトレインキーホルダー』を先行で購入していただけます。また、商品を購入した方の中から抽選で、10月の『東急電車まつり』の招待券が当たる企画も用意しました。
このように、街を巡る体験からECサイトへつなぎ、そこから再びリアルイベントへつなげる導線を設計しました。
編集部:第二弾を企画する上で、特に意識した部分はありますか。
山方:意識したのは、ファミリー層に参加していただける設計にしたことです。
第一弾企画のコンプリート特典はお茶のデジタルギフト等だったこともあり、ファミリー層には十分に訴求できなかったのが反省点でした。
そこで今回は家族で参加できるイベントへの抽選応募などを特典にしました。これであれば、お父さんやお母さんのどちらか一人がキャンペーンに参加しても、当選すれば家族みんなで出かけられます。
このような二次的な移動まで生み出す点を意識して設計しました。
編集部:今回、デジタルスタンプラリーを共同で企画・実施している東急電鉄にとっては、どのようなメリットがあるのでしょうか。
山方:東急電鉄のメリットは、会員になる前のお客さまの行動を知ることができる点です。
東急電鉄には東急IDがあり、登録会員に対しては販促やマーケティングを行えます。一方、従来は未登録のお客さまの行動を把握することが難しいという課題がありました。
今回のデジタルスタンプラリーは誰でも参加できるため、会員になる前のお客さまを含め、より幅広い層の行動傾向を捉えられる点がメリットです。
編集部:スタンプラリーの配布データから、人々の行動がわかるのですね。ATMを通じてNFTを配布しているセブン銀行にとっては、どのようにビジネスに繋がるのでしょうか。
山方:直接的には、ATMを活用したキャンペーンサービスの提供に伴う利用料が収益になります。
それに加えて、ATMで交通系電子マネーにチャージしたお客さまに、そのバリューの使い道となるキャンペーンを案内し、クライアントの商品・サービスの利用につなげることもできます。
ATMから買い物や移動へ
編集部:NFTなどのデジタル技術の活用に関して、今後はどのような展開を考えていますか。
山方:大きく考えているのは、買い物と移動、それから自治体との連携です。
買い物の面では、2026年3月に電通グループなどとの実証実験に取り組んでおり、電子マネーをチャージしたお客さまにセブン-イレブンの商品を購入してもらうなど、販促につなげていく施策を考えています。
また移動の面では、鉄道会社などと連携し、近隣を巡るスタンプラリーのような企画もさらに進めていきたいですね。
自治体との連携については、観光イベントなどを知ってもらうきっかけとしてATMを活用することを検討しています。
編集部:全国にATMがあるからこそ、できることが多いですね。
山方:そうですね。全国に28,000台以上設置されたATMのネットワークは当社が築いてきた大切な資産なので、しっかりと良い形で活用し、当社のプレゼンス向上につなげられればと思っています。
編集部:「ATMからNFTが手に入る」という斬新な企画について、詳しくお話をいただきました。今日はありがとうございました。
インタビューを終えて
今回の取材で特に印象的だったのは、技術の先進性を主張するのではなく、課題解決の手段として静かにNFTを機能させている点だ。個人情報を取得しない設計でありながら、従来のATM利用では難しかった顧客の行動データを把握できる点は、企業にとって非常に画期的なアプローチと言える。
第一弾の企画では7,000枚以上のNFTが発行されており、ユーザーが「NFT」と意識せずとも、魅力的な体験であれば自然と受け入れられることを実証してみせた。データを起点にユーザー理解を深め、ATMから買い物、移動、リアルイベントへと体験を広げていくセブン銀行の取り組みは、今後のWeb3活用における一つの大きな指針となりそうだ。
- 株式会社セブン銀行 公式サイト:https://www.sevenbank.co.jp/
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