
「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」と呼ばれる、脱炭素社会の実現と経済成長の両立を目指す取り組みが、2026年に大きな転換点を迎えました。
2023年5月に成立した「GX推進法」に基づき、2026年4月から日本版排出量取引制度「GX-ETS」の義務化フェーズがスタート。CO2の直接排出量が年間10万トン以上の事業者は制度への参加が義務付けられ、対象企業だけで日本全体の温室効果ガス排出量の5割超をカバーする見通しです。
さらに2028年度には化石燃料の輸入事業者などを対象とした「炭素賦課金」の導入も予定されており、企業にとって脱炭素はもはや「取り組むかどうか」ではなく「どう証明し、どう取引するか」の段階に入っています。
この「証明」と「取引」の領域で存在感を増しているのが、ブロックチェーン・NFTの技術です。改ざんや二重計上を防ぎながらCO2削減量を記録できる特性は、カーボンクレジットの信頼性を担保する基盤として、金融庁の検討会報告書(2025年6月)でもトークン化活用の動きが取り上げられました。
そこで本記事では、国内のNFT×GXの最新事例5選を紹介します。 運営会社や概要についても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそもGX(グリーン・トランスフォーメーション)とは?
GXは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称で、温室効果ガスの削減やカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを、経済成長の機会と捉えて社会システム全体を変革していくことを指します。
日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言。これを実現する政策パッケージとして、2023年5月にGX推進法が成立し、20兆円規模のGX経済移行債の発行や、排出量取引制度(GX-ETS)・炭素賦課金からなる「成長志向型カーボンプライシング」の導入が決まりました。
経済産業省はGXを以下のように定義しています。
2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経済社会システム全体の変革がGXです。
引用:GXリーグ基本構想
そして2026年4月、GX-ETSは自主参加の試行フェーズを終え、義務化フェーズ(第2フェーズ)へと移行しました。排出枠の取引市場はGX推進機構が運営し、2026年度の参考上限取引価格は4,300円/t-CO₂程度とされています。カーボンクレジットや排出枠が「価格のつく資産」として本格的に流通し始めた今、その信頼性・透明性を支える技術としてブロックチェーン・NFTへの注目が高まっています。
GXにおけるNFT活用事例5選
ではGX×NFTの最新事例を紹介していきます。
- capture.x
- KlimaDAO JAPAN MARKET
- Re:co(旧MORI NFT)
- aNET ZERO
- WOOD DREAM DECK
それぞれ詳しく見ていきましょう。
capture.x

| 運営会社 | 株式会社bajji |
| 公式サイト | https://www.capturex.world/ |
capture.xは、CO2削減プロジェクトを応援しながら、脱炭素社会の早期実現を目指すサービスです。
もともとはCO2削減に取り組む発電所などの施設をNFT化して販売し、購入者が「デジタルオーナー」としてCO2削減量をリアルタイムで確認できる仕組みとしてスタートしました。JERAが運営する太陽光発電所のデジタルオーナー権付きNFTなど、実在のインフラと紐づいた点が特徴です。
2024年1月にはiOS/Androidのスマホアプリ版(v2.0)をリリースし、生成AIを組み合わせた新機能を実装。CO2削減量を確認する「エール」というアクションは累計10万回を突破し、サービスモデル全般に関する特許も取得しています。現在は「無料で、楽しく、CO2削減に貢献できる」ゲーミフィケーション型アプリへと進化しており、ミッションをこなすだけで世界のCO2削減に参加できる、個人の行動変容を促すサービスとして展開が続いています。
KlimaDAO JAPAN MARKET

引用:公式サイト
| 運営会社 | KlimaDAO JAPAN株式会社 |
| 公式サイト | https://www.klimadao.jp/ |
KlimaDAO JAPAN MARKETは、日本の代表的なカーボンクレジット「J-クレジット」をブロックチェーン上でトークン化し、売買を可能にするマーケットプレイスです。
グローバルで稼働するKlimaDAOのスマートコントラクト「Carbonmark API」を活用し、J-クレジットをPolygonブロックチェーン上のトークン(Jクレトークン)として発行。1トークンが1トンのCO2削減量に対応します。2024年12月から始まったベータ版実証には、J-POWER(電源開発)やエナリス、JPYCなど多様な企業・自治体が参加し、オプテージが法人向けウォレットを提供、みずほフィナンシャルグループが実務をサポートするなど、大手金融・エネルギー企業を巻き込んだ体制が特徴です。
三菱UFJ信託銀行の「Progmat」基盤との連携や、日本円ステーブルコインJPYCによる決済も構想されており、カーボンクレジット取引と国内ステーブルコインを組み合わせた次世代インフラとして注目されています。現在は、誰でもカーボンクレジットを売買できるマーケットプレイス「CarbonMall」の開発も進められており、GX-ETS本格稼働で需要が高まるクレジット市場の透明化・民主化を目指しています。
Re:co(旧MORI NFT)

| 運営会社 | 株式会社PBADAO|KlimaDAO JAPAN株式会社 |
| 公式サイト | https://pbadao.com/ |
Re:co(リコ)は、実際の環境保護活動と連動し、CO2吸収量の増加に応じてカーボンオフセット用のNFTがエアドロップされるReFi(再生金融)プロジェクトです。
前身は、JE FOREST株式会社が運営していた「MORI NFT」。森林整備プロジェクトに紐づいてNFTが発行され、現実の森のCO2吸収量に連動して「iGreen」というNFTが保有者に自動でドロップされ、それをバーン(焼却)することでブロックチェーン上に記録される形のカーボンオフセットができる、という日本発の先進的な仕組みでした。2023年3月には第一弾として広島県庄原市の森林整備事業を裏付けとしたNFTが完売しています。
2024年11月、MORI NFTはPBADAOとKlimaDAO JAPANが運営するグリーンファイナンス事業「tancre Regen」と統合され、Re:coとして再スタート。対象は森林クレジットに限定されず、ブルーカーボン(海洋生態系)や水田など幅広い生態系保護活動へと拡大しました。小規模事業者でも参加できる仕組みを提供している点も特徴で、個人を巻き込む共創型の気候アクションとして進化を続けています。
aNET ZERO

| 運営会社 | aNET ZERO株式会社 |
| 公式サイト | https://www.a-netzero.com/ |
aNET ZEROは、全国の主要コンクリートメーカー約50社が参画するコンクリートGX政策集団「aNET ZEROイニシアティブ」の脱炭素経営プラットフォームです。運営会社は、提唱者である會澤高圧コンクリートが福島県浪江町に設立しました。
中核となるのが、炭素削減量の計算根拠となる証跡データをNFTとして発行するシステム「Decarbo-Badge Factory」です。脱炭素系コンクリートの出荷データや配合マスタをもとに、CO2排出量(ベースライン)と削減量がAPI経由で送信されるとNFTが自動発行され、削減根拠の計算内訳も自動生成されます。
発行されたNFTは、double jump.tokyoの法人向けウォレット「N Suite」を介して、製品を購入したゼネコンや発注元のデベロッパーへと譲渡されます。これにより、Scope3ベースの炭素削減量のトレーサビリティを確保し、データの改ざんや二重計上を防止。サプライチェーン全体で削減実績を受け渡す「取引慣行」としてNFTを定着させようとする、B2B領域のGX×NFTの代表例です。GX-ETS義務化で排出量データの信頼性が問われる時代において、最も実務に近い活用モデルといえるでしょう。
WOOD DREAM DECK

| 運営会社 | TIS株式会社 |
| 公式サイト | https://www.tisi.jp/branding/uxdesign/wooddreamdeck/ |
WOOD DREAM DECKは、web3技術を活用して「木を使ってしたいこと」を持つ人の願いを叶える支援を通じ、森林資源の循環利用を促進しながら「都市集中・地方衰退」と「低・脱炭素化」の解決を目指すプログラムです。
第一弾として、埼玉県秩父郡横瀬町の官民連携プロジェクト「よこらぼ」で採択され、地域材の合板を活用した小屋サウナ「ocomori(オコモリ)サウナ」を製作。この取り組みは「ウッドデザイン賞2023」を受賞しました。
横瀬町を中心としたオンラインコミュニティには、全国の林業・木材加工などの森林関係者から森林活用に関心のある一般参加者まで140名以上が集まっており、地域外の人が制作に携わることで関係人口の創出にも貢献しています。放置された人工林の循環利用という日本固有の課題に、コミュニティとweb3の力でアプローチする事例です。
NFT×GXの活用事例まとめ
2026年、GX-ETSの義務化により、CO2削減量は「証明し、取引する資産」となりました。その信頼性を支える技術として、改ざん不可能な記録を実現するブロックチェーン・NFTの役割は、この2年で「啓発・応援」から「実務インフラ」へと大きく進化しています。
個人の行動変容を促すcapture.xやRe:co、カーボンクレジット市場そのものを変えるKlimaDAO JAPAN MARKET、サプライチェーンの削減証明を担うaNET ZERO、地域と森をつなぐWOOD DREAM DECK。アプローチは異なりますが、いずれも「見えない環境価値を、見える形で流通させる」という点で共通しています。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、NFT×GXの動きは今後も加速していくでしょう。今回紹介した事例を参考に、自社のビジネスや自分のできることから取り組んでみてはいかがでしょうか。
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