トラベルルールとは?各取引所の対応をわかりやすく解説

暗号資産(仮想通貨)を取引所からほかの取引所やウォレットへ送金する際には、「トラベルルール」と呼ばれる規制が関わってきます。2023年6月に日本で導入されて以降、対象となる国・地域は段階的に拡大し、関連する法整備も急速に進んでいます。

本記事では、トラベルルールの仕組みや必要性、対象となる国・地域の一覧、そして各取引所の具体的な対応を、2026年時点の最新情報にもとづいてわかりやすく解説します。

トラベルルールとは何か?

トラベルルールとは、暗号資産の移転(送金)に関する規制です。利用者から送金の依頼を受けた暗号資産交換業者は、送付依頼人と受取人の情報を、受取人が利用する別の暗号資産交換業者に通知する義務を負います。取引の経路を追跡できるようにすることで、透明性と信頼性を高めることが狙いです。

このルールは、マネーロンダリングやテロ資金供与の対策として、政府間機関である金融活動作業部会「FATF(Financial Action Task Force)」が各国に導入を求めている国際基準にもとづいています。

日本では、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)などの改正により、2023年6月1日からトラベルルールが義務化されました。導入は、金融庁が認可する自主規制団体「一般社団法人 日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)」を主体に進められています。

トラベルルールの概要

トラベルルールによって通知が義務づけられたのは、以下4つの情報です。

1.送付依頼人情報(氏名、住所または顧客識別番号)
2. 受取人情報(氏名、送付先暗号資産アドレス、住所に関する情報)
3.受取側暗号資産交換業者有無、ある場合はその名称
4.取引目的等に関する情報

※参照:日本暗号資産取引業協会「トラベルルール導入について」

暗号資産取引所の口座から資金を送金する際、これらの情報を通知しなければ資金移動ができません。

2種類の通知システム「TRUST」と「Sygna」

また、送金情報の通知システムには『TRUST(トラスト)』『Sygna(シグナ)』の2種類が存在し、取引所ごとにいずれかのシステムが用いられています。

  • TRUST(トラスト) … 米大手取引所Coinbaseなどが開発したソリューション
  • Sygna(シグナ) … 台湾のセキュリティ企業CoolBitXが開発したソリューション

注意が必要なのは、TRUSTとSygnaのあいだに互換性がない点です。原則として、異なるシステムを採用する取引所同士では、直接送金ができません。送金前には、送金元と送金先がどちらのシステムを使っているかを確認する必要があります。

ただし、2024年以降は両方のシステムを併用する取引所が登場し、国内取引所間で送金できる範囲は当初より広がっています(詳細は後述)。

トラベルルールの通知は、金融庁が指定した国・地域(通知対象法域)に所在する事業者を対象に適用されます。指定の条件は、日本の通知義務に相当する規制が整備されていることです。

この対象法域は段階的に拡大しており、導入当初の2023年時点では21の国・地域でしたが、2025年4月25日の告示改正により30法域が追加され、2025年8月1日時点で合計58の国・地域が対象となりました。この追加で、EU加盟国の主要国がほぼ網羅される形になっています。

2025年8月1日時点の通知対象法域は、以下のとおりです。

アイルランドアメリカ合衆国アラブ首長国連邦
アルバニアイスラエルイタリア
インドインドネシアウズベキスタン
英国英領バージン諸島エストニア
オーストリアオランダカナダ
キプロスギリシャクロアチア
ケイマン諸島シンガポールジブラルタル
ジャージースイススウェーデン
スペインスロバキアスロベニア
セルビア大韓民国チェコ
デンマークトルコドイツ
ナイジェリアナミビア(暗号資産のみ)ハンガリー
バーレーンバハマバミューダ諸島
フィリピンフィンランドフランス
ブルガリアベネズエラベルギー
香港ポーランドポルトガル
マルタマレーシアマン島
南アフリカ共和国モーリシャスラトビア
リトアニアリヒテンシュタインルーマニア
ルクセンブルク

※参照:金融庁「トラベルルールの対象地域について

トラベルルールの必要性

トラベルルール実施の目的は2つあげられます。

1.マネーロンダリングやテロリストへの資金供給防止
2.不正利用が発生した際、追跡できる体制づくり

暗号資産は、ウォレットを作成すれば個人情報を入力することなく誰でも資金をやりとりできます。その利便性の裏側で、詐欺やハッキングで奪われた資金がマネーロンダリングに悪用されるケースも発生してきました。

ただし、暗号資産を法定通貨に換金する際には、原則として暗号資産取引所を通す必要があります。そのため、不正な資金移動を防ぐ「最後の砦」として、取引所での情報管理が重要なポイントになっているのです。

トラベルルールによる影響

トラベルルールの実施により、利用者には以下の影響が発生します。

1.TRUSTとSygna、2つの通知システムをまたいだ送金ができない
2.システムに対応していない銘柄は送金出来ない
3.情報入力の手間が増える

前述した通り、TRUSTとSygnaには互換性がありません。
暗号資産取引所によって使用するシステムが異なるため、送金前のリサーチが必要です。

また、同じ通知システム同士だとしても、システムに対応していない銘柄は送金できません。

暗号資産は送金に失敗した場合、そのまま紛失し取り返しがつかないケースもあります。
送金前には、少額の送金テスト実施をオススメします。

トラベルルールにはどう対応すればいいか

各通知システムに対応した口座を開設

TRUSTとSygna、両方の暗号資産口座を持っておけば、柔軟に送金対応ができるでしょう。

日本国内取引所では、bitFlyerとCoincheckがTRUST、その他の取引所がSygnaを採用しています。

海外取引所では通知システムが不明な会社もあるので、開設前に調べましょう。

通知対象外国以外の取引所を利用

トラベルルール対象外のエリアに拠点を置く取引所、いわゆるオフショア取引所なら従来通りの送金が可能です。
Bybitなど、日本語対応している取引所もあります。

※規制や取引所の対応によっては、送金できない可能性もあるので事前の調査が必要です。

暗号資産ウォレットを経由して送金

メタマスクなど、暗号資産ウォレットを経由すればトラベルルールの影響を受けずに送金が可能です。

暗号資産ウォレットは、個人情報の入力をすることなく利用できるので、プライバシーが流出する心配もありません。

送金時にガス代は発生してしまいますが、手軽に使える送金手段の1つです。

代表的な暗号資産ウォレットは以下3つです。

MetaMask/ETH系規格に対応
・Trust Wallet/BTC・ETH・XRPなど、多くの銘柄に対応
・Phantom Wallet/SPL規格に対応

暗号資産取引所の対応策

Coincheck(コインチェック)

Coincheckでは、以下のような対応が取られています。
・TRUSTを採用
・送金できる国内取引所はbitFlyerのみ
・TRUST対応の海外取引所への送金可(TRUST対応銘柄のみ)

送金可能な取引所送金可能な暗号資産銘柄送金不可の取引所
国内・bitFlyer・BTC
・ETH
・BAT
・ENJ
・OMG
・SAND
・CHZ
・LINK
・PLT
・FNCT
・GMOコイン
・bitbank
・SBI VC Trade
・DMM Bitcoin
・Bitpoint
・Zaif
・CoinTrade
・BitTrade
海外(通知対象国)・Crypto.com 
・Coinbase
・BTC
・ETH
・MEXC Global
・Coin Cola
海外(通知非対象国)・Bybit
・KuCoin
・Huobi Global
Coincheckで取扱中の全銘柄
プライベートウォレット・MetaMaskCoincheckで取扱中の全銘柄

※参照:https://faq.coincheck.com/s/article/tr-send-recv-details?language=ja

bitFlyer(ビットフライヤー)

bitFlyerでは、以下のような対応が取られています。
・TRUSTを採用
・送金できる国内取引所はCoincheckのみ
・TRUST対応の海外取引所への送金可(TRUST対応銘柄のみ)

また、今後TRUST以外のシステム採用も検討されているようです。

送金可能な取引所送金可能な暗号資産銘柄送金不可の取引所
国内・Coincheck・BTC
・ETH
・SHIB
・PLT
・MAITC
・MKR
・LINK
・BAT
・GMOコイン
・bitbank
・SBI VC Trade
・DMM Bitcoin
・Bitpoint
・Zaif
・CoinTrade
・BitTrade
海外(通知対象国)・Crypto.com 
・Coinbase
・BTC
・ETH
・SHIB
・PLT
・MAITC
・MKR
・LINK
・BAT
・MEXC Global
・Coin Cola
海外(通知非対象国)・Bybit
・KuCoin
・Huobi Global
bitFlyerで取扱中の全銘柄
プライベートウォレット・MetaMaskbitFlyerで取扱中の全銘柄

※参照:https://bitflyer.com/ja-jp/faq/5-32

BITPOINT(ビットポイント)

BITPOINTでは、以下のような対応が取られています。
・Sygnaを採用
・Coincheck、bitFlyerを除く国内取引所への送金可
・送金できない暗号資産取引所は、アドレス帳・編集時に出金先として指定できない

送金可能な取引所送金可能な暗号資産銘柄送金不可の取引所
国内・GMOコイン
・bitbank
・SBI VC Trade
・DMM Bitcoin
・Bitpoint
・Zaif
・CoinTrade
・BitTrade
・BTC
・BCH
・ETH
・LTC
・XRP
・BAT
・TRX
・ADA
・DEP
・MATIC
・GXE
・Coincheck
・bitFlyer
海外(通知対象国)・Binance
・MEXC
・Bitrue
・Bitfinex
・Bithumb
・Bitstamp
・Blockchain.com
・OKX
・BTC
・BCH
・ETH
・LTC
・XRP
・BAT
・TRX
・ADA
・DEP
・MATIC
・GXE
左記以外
海外(通知非対象国)・Bybit
・KuCoin
BITPOINTで取扱中の全銘柄
プライベートウォレット・MetaMaskBITPOINTで取扱中の全銘柄

※参照:https://www.bitpoint.co.jp/news/info/info-2023052601/

bitbank(ビットバンク)

bitbankでは、以下のような対応が取られています。
・Sygnaを採用
・Coincheck、bitFlyer、Crypto Garageを除く国内取引所への送金可
・法令等で定められた通知を正確に行えない可能性がある場合、送付できない
・等外リスト以外に関しては入出金可・リストは今後、変更される可能性がある

送金可能な取引所送金可能な暗号資産銘柄送金不可の取引所
国内・GMOコイン
・bitbank
・SBI VC Trade
・DMM Bitcoin
・Bitpoint
・Zaif
・CoinTrade
・BitTrade
bitbankで取扱中の全銘柄
※受け入れ先が対応している場合にかぎり
・Coincheck
・bitFlyer
・Crypto Garage
海外(通知対象国)・MEXC Global   
・Coin Cola
bitbankで取扱中の全銘柄
※受け入れ先が対応している場合にかぎり
・Crypto.com
・Coinbase
・Kraken
海外(通知非対象国)・Bybit
・KuCoin
・Huobi Global
bitbankで取扱中の全銘柄
プライベートウォレット・MetaMaskbitbankで取扱中の全銘柄

※参照:https://support.bitbank.cc/hc/ja/articles/17315981888537

トラベルルールにおける直近の動き

2026年5月15日、日本国内のトラベルルール対応で圧倒的シェアを誇るSygna株式会社が、VerifyVASPの傘下に入りました。VerifyVASPとは、デジタルアセットを専門とするシンガポールの企業です。

Sygnaのカントリーマネージャージャパンである斉藤寿幸氏は、今回の買収の背景を「VerifyVASPによる日本市場へのアクセス」と述べる一方、国内取引所への影響について「拙速なシステム変更はお願いできない」と顧客への配慮を丁寧に強調していました。

今後のネットワーク統合や暗号資産の金商法適用による業界再編についても、「一つの大きな流れになる可能性がある」と冷静かつ前向きな見通しを示しています。

インタビューの模様は以下の記事からご確認ください。

【独自取材】Sygna斉藤氏が語るVerifyVASPによる買収の背景

まとめ

暗号資産の「トラベルルール」は、マネーロンダリングやテロ資金供与を防ぎ、より安全でクリーンな取引環境を構築するための重要な国際ルールです。2025年8月時点で対象となる国・地域は58法域まで拡大しており、グローバルな規制網は年々強化されています。

本記事で押さえておきたい重要なポイントは以下の通りです。

  • 取引所間送金の厳格化: 取引所から暗号資産を送金する際、送付依頼人と受取人の詳細な情報通知が義務づけられました。
  • システムの壁(TRUSTとSygna): 各取引所が採用する通知システムには互換性がなく、原則として異なるシステム間での直接送金はできません。
  • ユーザー側でできる対策: 「TRUST採用(Coincheck、bitFlyerなど)」と「Sygna採用(その他の国内取引所)」の両方の口座を持っておくか、メタマスクなどのプライベートウォレットを経由することで、送金制限を回避しやすくなります。

今後はシステムの統合や業界再編によって送金の利便性が向上していく可能性もありますが、現状では自己防衛が不可欠です。大切な資産を守るためにも、暗号資産を送付・受取する際は、常に利用する取引所の最新のガイドラインをチェックするように心がけましょう。

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