ハードフォークという事象は、仮想通貨の取引における大きなルール変更の一種であり、広く取引されている通貨であればあるほど保有者に影響をもたらす傾向にあります。
実質的に保有していた仮想通貨が新しい通貨に「分岐する」ことから、取引初心者を中心にプロセスの中で混乱が生じることも珍しくありません。
この記事では、仮想通貨取引の初心者にとってイメージしにくいハードフォークについて、取引に際して覚えておきたい基礎知識と、取引前に知っておきたい過去の事例などについてご紹介します。
Contents
ハードフォークとは
ハードフォークとは、仮想通貨の仕様が変更される事象のことです。
仕様変更の過程で、従来のものと互換性のない通貨が分岐して生まれるため、実質的に新しい仮想通貨が古い仮想通貨と並列して誕生することになります。
似たような概念に「ソフトフォーク」というものがあります。
ソフトフォークもハードフォーク同様、大きなルール変更が起こっているのですが、新しい仮想通貨は誕生せずに仕様だけが変わります。
500円硬貨が新しく発行されるケースで例えた場合、旧硬貨の流通を認めたまま新硬貨を発行するのがハードフォークで、旧硬貨をすべて新硬貨に一新するのがソフトフォークと考えると、イメージが掴みやすいかもしれません。
ハードフォークのメリット・デメリット
多くの場合、ハードフォークが行われるのは、仮想通貨の性能向上が目的です。
よって、これまでユーザーが抱えていた問題がハードフォークをした後に解決すると、より使いやすい通貨として価値が上昇する可能性があります。
また、ハードフォーク後に分岐前と同等の価値の通貨が付与される場合があるため、実質的に損をせずに使い勝手のいい通貨を手に入れるチャンスも得られます。
ただし、これにはデメリットも存在してます。一つの仮想通貨から新しい仮想通貨が生まれるハードフォークは、ハードフォークの実施が決定した段階で市場での取引が停止されるため、その間は通貨の売買・現金への換金もできなってしまうのです。
ハードフォークのプロセスでバグなどの問題が発生した場合、問題の解決前に取引することで、保有する通貨を失ってしまうおそれもあります。
仮想通貨保有者はハードフォーク時にどう備えればよいのか
ハードフォークの対象となる仮想通貨の保有者が注意すべきポイントは、正確な情報の収集と利用している取引所の対応です。
取引所の多くは計画されたハードフォークへの対応指針を公開しているため、通貨が分裂する前に何をすれば新通貨が授与できるのか、事前にチェックしておきましょう。
また、直近で取引を予定していた仮想通貨がハードフォークの対象となった場合、期日前後の送付・取引を避けるなど、損失リスクを回避するための行動も保有者には求められます。
取引所で取引停止が決定すると、仮想通貨の移動ができなくなるおそれがあるので、可能な限り早めに取引所のスケジュールを押さえておくことが大切です。
ハードフォークの過去事例
日本円などの法定通貨の場合、通貨のリニューアルや新通貨発行と聞くと一大事に聞こえますが、仮想通貨におけるハードフォークは決してイレギュラーケースではありません。
広く名を知られるビットコイン・イーサリアムなども、過去にハードフォークを経験しています。
さらに、ビットコインからのハードフォークで誕生した新通貨「ビットコインキャッシュ」も、開発者の対立などを契機に数回のハードフォークが実施されました。
過去の例を見る限り、ハードフォークは仮想通貨の質を高めるために必要な行為だと言えますし、今後も新しい通貨誕生の契機となることが予想されます。
ビットコインキャッシュがハードフォークから生まれた背景
ハードフォークが必要となる背景について、ビットコインを例にもう少し掘り下げていきましょう。
ビットコインなどの仮想通貨は、データの改ざん・破壊防止技術「ブロックチェーン」を搭載しており、通貨自体が取引履歴をブロックとして記録・連携できる特徴を持っています。
ブロックチェーンは、仮想通貨の安全性を担保する技術として重要ですが、一つひとつのブロックの要領には限界があります。
ビットコインのブロックサイズは1MBであり、データがすぐに満杯になってしまうため、処理速度が低下して送金遅延などが起こる「スケーラビリティ問題」にユーザーは悩まされてきました。
そこで、決済手段としてのビットコインが持つデメリットを解消するため、より大きなブロックサイズを持つビットコインキャッシュがハードフォークによって誕生したのです。
まとめ
今回は、ハードフォークに関する基礎知識・過去事例をお伝えしました。
仮想通貨を保有する人の中には、通貨が新しく変わることに抵抗を感じる人もいると思いますが、仮想通貨の発展にとってハードフォークはなくてはならないものです。
大切な資産を失わないためにも、取引所が発表する情報を確認した上で、適切な対応を心がけましょう。