【インタビュー】エンタメテック企業、エイスリーがNFTに参入する理由

エンターテイメントはNFTをどう活用していくべきなのか。日々多くのエンターテイメントが提供される中で、NFTを用いてタレントや芸能人との結びつきを強める施策を得意としている株式会社エイスリーの社長室長 兼 マーケティング室長、菱沼 匡氏に話を伺った。

貴社の事業内容について教えてください

弊社は「世界の“才能”をつなぐプロフェッショナル」をミッションに、総合キャスティング事業、タレントストック事業、エンタメ特化型総合人材事業、エンタメ特化型M&A仲介事業を運営している企業です。

中でも主力のキャスティング事業は、タレント、芸人、俳優、モデル、VTuber、YouTuber、アイドル、歌手、声優、アスリート、専門家、文化人、クリエイター、アーティスト、コスプレイヤー、エキストラ、MC、キャラクター等をお客様のご要望に応じて最適にアサインする事業で、様々なジャンルの芸能事務所との繋がりが多い点が特徴です。

なぜNFT領域に目を向けたのですか?

前述のエイスリーの強みを活かした新規事業を考案している中で、メディアで頻繁に取り上げられ始めたNFT領域の盛り上がりを目にしました。

直感で今後伸びていきそうな領域だな、という感覚があり、自社のアセットと組み合わせて新しい取り組みをしたら何ができるだろう、と考えた始めたのがきっかけです。

タレントという中長期的な固定ファンが付きやすい特徴を持つ人たちと、長い時間軸で継続的に価値を持ち続けることのできるNFTは非常に相性が良いと感じたのです。

具体的には何を行っていくのでしょうか?

大きな取り組みとしては2つあります。

1つ目はライブなどのイベントにNFTを掛け合わせてファンのエンゲージメントを高めていく企画です。

具体的には、ライブの参加者にNFTを発行し、NFT保持者にステージ裏でハイタッチする権利を得られる抽選の参加券を付与したり、クローズドのNFTホルダーコミュニティに招待するなどです。

ただNFTを付与して終わり、ではなく、保有者だからこそ受けられるファンサービスを追求していくつもりです。

既存のファンクラブをデジタルの力でアップデートしていくイメージですね。

芸能事務所にNFTの活用状況をヒアリングした際に、NFTに興味はあるが、まずはライブなどの既存のフローの中でトライアルしていきたいという声を多くいただきました。

そのご意見を反映させ、新たにプロジェクトとして立ち上げるよりは既存の仕組みの中にNFTを溶け込ませるという事務所が参画しやすい座組みを意識しております。

2つ目はクラウドファンディングのような形でプロジェクト自体に出資者を募り、出資してくれた人に特典付きのNFTを発行するという取り組みです。

弊社ではフィナンシェさんというクラウドファンディングの仕組みを運営している会社と協業しており、フィナンシェさん内で出資者を募り、プロジェクトを運用します。

フィナンシェさん内では出資金額4000万円以上を集めることのできたプロジェクトも存在し、大規模なプロジェクトを仕掛けることもできると期待しています。

いずれの取り組みも、ユーザー側にはNFTの概念を理解してもらうというよりも、電気などのインフラのように気がついたらNFT体験をしていたというような環境を整えて行くのがエイスリーの役割だと考えています。

NFTをはじめとしたエンタメテック市場の今後の成長性、課題についてどのようにお考えでしょうか

今後の日本市場での成長可能性が大いにあるジャンルだと考えております。

世界では名だたるVIP達がNFTを購入してSNSのプロフィール画像に設定していたり、デジタルアーティストのBeepleが発行したNFTが当時の価格で約75億円で落札されたりと、大きな盛り上がりを見せています。

一方で日本ではNFTを触ったことのある人はまだまだ少ないのが現状です。

これには事業者がNFTを活用するにあたっての法整備が遅れていることや、ユーザーがNFTを購入するまでのプロセスに高いハードルがあるなどの理由があると考えています。

前述の通り、日本においてNFTを一般化させるにあたっては、ユーザー側にはNFTの概念を理解してもらうというよりも、電気などのインフラのように自然にNFT体験をしてもらえるような環境作りが重要と考えています。

そこで鍵となるのがエンタメの力になります。

エンタメ領域において、NFTには「特別なファン体験を紐付けられる」という特徴があり、ファンに対して「いつの間にかNFTを触っていた」という状態を創出しやすいジャンルだと考えています。

エンタメ×NFTでの企画を増やし、ユーザーがNFTを所有するまでの障壁を超えられる原動力となり得るようなコンテンツをどんどん世に送り出していきたいですね。

どんなタレントがNFTとの相性がいいのか

タレントを活用したNFTの成功事例を観察していると、コアファンの多いタレント、SNS等での拡散力が大きいタレントの相性が良い傾向にあるようです。

NFTを発行しても全てのファンがNFTを所有してくれるわけではありません。

粘着性の高いファンを持つタレントがNFTを始めると、ファンがNFT取得のハードルを越えてきてくれるので、NFTホルダーが増えやすい傾向にあります。

また、NFTに日常的に触れている人たちはTwitterなどのSNSで常に情報収集しており、面白そうなプロジェクトに敏感なので、SNSでの発信が活発なタレントであれば、NFT関係者の目に止まる確率も増え、プロジェクト出資などの話にも繋がりやすい傾向があります。

もちろん、NFTとの相性がいくら良くても、ただNFTを発行するだけでなく、継続性のある「特別なファン体験」を作り出し、ファンにNFTを所有している意味を認識してもらうことが重要だと思います。

NFT×エンタメで注目している事例を教えてください

ここ数年でタレントがNFTと絡めた取り組みが加速しています。

その中でも注目している事例をいくつかご紹介させていただきます。

よしもと

よしもとがLINE NFT上で展開する「よしもとNFTシアター」ではよしもと芸人のネタをNFT化したものを販売しています。

ファンは芸人がNFTのために撮り下ろした動画を所有することができ、「芸人のネタが自分のものになる」というファンにとってはたまらないコンテンツで、NFTを上手く活用している事例であると思います。

また、「よしもとNFTシアター」LINE NFT上での販売となっていることも注目すべき点です。

LINE NFTで発行されたNFTは、LINEユーザーであれば簡単にNFTを購入できるため、ユーザーがNFTを所有するまでのハードルを限りなく下げたマーケットプレイスであり、これを活用している「よしもとNFTシアター」は、NFT×エンタメの力を最大限引き出すコンテンツとして注目しています。

よしもとさんのもう一つのweb3関連の取り組みとして、既存のデジタルカードアプリ、「FANY よしもとデジタルコレカ」があります。

「FANY よしもとデジタルコレカ」は、「よしもトークン」と言われるコミュニティ通貨も発行しており、国内でもいち早くweb3やNFTを取り入れた事例の一つです。

ファンは、購入したデジタルコレカをTwitterや現場でトレードしたり、ファン同士のコミュニケーションツールとして活用しているようです。

▼よしもとNFTシアター
https://nft.line.me/store/brand/1

▼FANY よしもとデジタルコレカ
https://yoshimotokoreka.com/

ももいろクローバーZ

アイドルグループの「ももいろクローバーZ」はこれまでに第一弾、第二弾と2回に渡ってNFTの発行を行っています。

それぞれNFT所有者の中から定期的に抽選でサイン入りグッズなどのプレゼントを行っており、「ファンがNFTを所有する意味」を上手く考えた事例です。

累計2000万円以上を売り上げ、NFT×エンタメの成功事例として申し分ない取り組みであると考えています。

引用元:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00550/00004/

ももいろクローバーZがNFTを発行して成功した理由として、「ファンのエンゲージメントの高さ」を考えています。

注目すべきは、第二弾NFTのHPに所々見られる、「NFTを手に入れろ」や「モノノフなら押せ」というような命令口調のような文字。

ももいろクローバーZのファンはモノノフと呼ばれており、これはももいろクローバーZが集合を掛けたらすぐに集まる武士のようなファンという意味合いがあります。

ももクロが集合を掛けたら集合するし、NFTを買えと言ったら買うのです。

ファンの熱量の高さ、エンゲージメントの高さを上手く利用した取り組みだと思います。

このように、NFTやweb3の領域は新しい概念でファンの理解を得るのも難しいからこそ、ファンのエンゲージメントの高さが成功のポイントになります。

▼第一弾NFT
https://momoclo.nft-official.com/

▼第二弾NFT
https://momoclo-2nd.nft-official.com/

NFTチケット(ジャニーズ)

チケットをNFT化する取り組みを推進しているのがジャニーズ事務所です。

ジャニーズでは伊藤穰一氏を顧問に迎え、いち早くチケットのNFT化を発表しました。

NFTチケットといっても、ユーザーはJohnny’s Pocketというアプリを入れるだけ。

ユーザーから見て既存のチケットサービスを使うのと変わらないNFT体験を実現しています。

ユーザーがNFTを所有するまでの障壁を限りなく下げたとても有意義な事例だと思います。

チケットをNFTと紐づけることによって、チケットの流通経路が改ざん不可能かつ透明性が高い状態でブロックチェーンに書き込まれるため、誰に何が転売されたかまで可視化されることや、転売されるたびに手数料をチケット発行者側に還元することができるため、不正利用や不正転売防止の観点からも注目されています。

また、チケットがNFTと紐づいていることで、ファンはNFTを「ライブに足を運んだ証明書」として保有することもできます。

ファンは足を運んだライブが貴重なものであればあるほど、そのライブに足を運んだことを自慢することが出来るので、特別なファンだという優越感に浸れるのです。

一方、NFTチケットの発行者側にもメリットがあります。

特定のNFTチケットを持っている人限定のイベントを開催することができたり、NFTチケット所有者に対して次回のライブを優先的に販売することができたりと、そのライブが終わった後も継続的なファンコミュニティツールとしてNFTチケットを活用することができ、エンゲージメント向上に繋げることができます。

どの事例も、ファンの応援に対して、金銭的なものも含めたインセンティブを付与する役割をNFTが担っており、ファンは「応援が価値になる」といった新しい体験を享受していることがポイントです。

NFTを組み合わせることで、ファンのエンゲージメントが向上し、結果としてコミュニティの強度向上に繋がことが、タレント側がNFTを活用するメリットです。

読者の方にメッセージをお願いします

NFTを日本で一般化させるにあたって、エンタメの力は大きな鍵となります。

エイスリーとしてはこれからの取り組みになりますが、「こんなタレントがNFTに参入してきた!」という話題性を作り出すことが一つの使命と考えており、芸能事務所やインフルエンサーとの繋がりの多い自社の強みを生かして実現していきたいと考えています。

NFTという技術とタレントを組み合わせるハブ役となることで、エンタメ業界をより一層盛り上げていきたいと思います。

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