【独自取材】well f.m.善井靖氏が見据えるNFTを活用した新たな観光モデル

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日本全国の観光地域づくり法人(DMO)は、現在その多くが財源や人材の不足といった課題を抱え、組織の立て直しを迫られています。特に地方創生の文脈において、従来の入湯税や宿泊税だけに頼らない「自主財源の確保」は喫緊の課題です。

こうした状況の中、NFTやWeb3の仕組みを活用した全く新しい観光振興・資金調達のモデルケースに挑戦しているのが、well f.m. 一般社団法人の善井靖さんです。

本記事では、各地でDMOの再建や地方創生のプロジェクトを牽引しているwell f.m.の善井靖さんに、DMOが抱えるリアルな課題と、NFTを通じた解決策、そして観光が目指すべき「住民のウェルビーイング向上」についてお話を伺いました。

【プロフィール】
善井 靖(よしい やすし)
well f.m. 一般社団法人 ファウンダー・理事

全国各地の観光地域づくり法人(DMO)の立ち上げや組織再建を牽引する地方創生プロデューサー。沖縄県南城市や那覇市、石川県加賀市・七尾市などで、NFTやWeb3のテクノロジーを活用した新たな資金調達モデルと、民間主導の観光マーケティング体制の構築に尽力している。
Note:https://note.com/wellnesstourism

沖縄県南城市におけるDMOの取り組み

NFTMedia編集部(以下、編集部):善井さんが取り組まれている沖縄南城市のDMOについて、近況をお聞かせいただけますでしょうか。

善井靖(以下、善井):沖縄県南城市ではDMOをつくる取り組みが進んでおり、2026年3月末にはNFT発行の仕組みが実装されました。

ただ、今後DMOの内部でNFTを活用してどのようにビジネスに繋げていくかという実働の部分において、商品開発や海外からの誘客プロモーションを担う人材がDMO側に足りていないという課題があります。

そこで地元企業からも力を借りながら、観光を誘致できる体制を整えたいと考えています。

編集部:具体的には、どのような施策を進めるのでしょうか。

善井: 代表的な例で言いますと、泡盛のプロジェクトがあります。

地元の泡盛は原料としてタイ米を使っていることが多いのですが、南城で古代から伝わっている稲作の種を使って米を作り、それを泡盛にしようと挑戦するプロジェクトが進行中です。

いわゆる「メイド・イン・南城」の、3年もの、5年ものといったプレミアムな泡盛をNFTで販売する計画です。

稲作から泡盛の販売まで時間がかかる資金回収をNFTで体験プログラムとして販売することで、ベンチャー企業のキャッシュフロー改善にもつながります。

那覇市の挑戦──古民家再生と新たな資金調達

編集部:沖縄県南城市のほかに、沖縄県那覇市でもDMOの活動をされているようですね。沖縄県那覇市の現状をお聞かせください。

善井:那覇は沖縄観光の入り口であるため、すでに順調なのだろうと思われるかもしれません。

たしかに、70年も前から那覇市観光協会という歴史ある登録DMOが活動している地域ではあります。しかし、財源的や人手不足の問題でなかなかうまくいっておらず、いかに財政的に活性化させるかという課題に直面しています。

そこで、私が2026年4月から那覇市観光協会の立て直しを引き受けました。

那覇市でもNFT活用ができるのではないかと考えているところです。一例として構想しているのが、古民家再生の文脈です。

那覇市内にもホテルがたくさん稼働しているものの、いわゆる真のハイエンドホテルはありません。一応ヒルトンはありますが、それでも一泊3万円ほどです。

そこで、古民家を活用したハイエンドの宿泊体験を提供できるのではないかと構想中です。

実は那覇市の中には「壺屋通り」という琉球の伝統的な陶器を作っていたエリアがあり、そこ一帯だけ古民家が残っているんですね。

編集部:都市化されている那覇の中に、古民家が残っているエリアがあるのですね。

善井: はい。その古民家を再生させて、歴史と文化のある佇まいの中でゆっくりお過ごしくださいというコンセプトの宿泊を提供したいと考えています。

都市部である那覇の宿泊選択肢に古民家が加わる事で、域内の連泊にも繋がり、結果外貨の獲得と域内への経済循環に繋がります。

全国に共通するDMOの課題──加賀市における組織改革

編集部:沖縄県以外にも、石川県加賀市や石川県七尾市で活動されているとお聞きしました。直近での動きを教えていただけますか。

善井:加賀市については、2025年から組織の立て直しに携わっています。

加賀市に限らず、市役所の配下にあるDMOの多くに共通する問題なのですが、一言で言うとDMOが「市役所の下請け機関」のようになってしまっているんです。

予算があったとしても、実際に指示を出して発注業者を決めているのは市役所の職員というケースも珍しくありません。つまり、DMO自体が自発的に動けていないのです。

マーケティングや営利活動に取り組もうと思っても、公務員中心の体制では未経験者が多く難しいのが現状です。

編集部:DMOとして積極的にマーケティングできる体制になっていなかったのですね。

善井:おっしゃる通りです。

日本のDMO制度ができて11年経ちますが、「90%はうまくいっていない」と言われています。その大きな理由が、多くが「一般社団法人」で作られており、銀行から融資を受けにくい構造になっているからです。加えて、行政機関の下請け的な組織になっており、意思決定スピードが遅いという要因も挙げられます。

本来、観光地域づくりは民間が主導する体制にすべきです。そこで加賀市では、地域活性化企業人(※)などの総務省の制度を活用し、民間企業からプロフェッショナルを派遣してもらい、民間の力でリードできる組織へと変革していこうとしています。

※地域活性化企業人・・・民間企業が社員を地方自治体に一定期間派遣する制度

七尾市の復興と観光振興──住民の「幸福度」をKGIに据える

編集部:石川県七尾市の事例については、いかがでしょうか。震災の影響もあり、非常に重要なフェーズかと思います。

善井:七尾市では、昨年(2025年)に10ヶ月ほどかけて「5年間の観光振興計画」を作りました。

震災後、人口が約26%(4分の1)も減ってしまったこの町が、これから観光という手段を使って本気で復興に向かうにあたり、一番大事な「目指す姿は何なのか」を定義しました。

そこで我々は、最終的なKGI(重要目標達成指標)を「住民のウェルビーイングの持続的向上」に設定しました。

今までの観光は、入り込み客の数や宿泊単価の向上ばかりを指標にしていましたが、「結局、それで住民の幸福度は上がったんですか?」という視点が欠けていたんです。

編集部:観光客を呼んで終わりではなく、そこに住む方々の生活の質や満足度の向上に繋げることがゴールなのですね。

善井:はい。デジタル庁が推進しているウェルビーイングの指数測定法を用いて、観光という手段で住民の幸福度がどう変化するかを数値化する計画です。

私の知る限り、観光振興プランのKGIに「住民幸福度の向上」を据えたのはこれが初のケースだと思います。

旅人が幸せになるのは当たり前ですが、迎え入れる側の経営者、地元で働いている人、そしてその家族など地域全体が、観光によって幸福度が上がり、自分たちの地域に対するシビックプライド(誇り)を持てるようになるべきです。

編集部:素晴らしい取り組みですね。その計画を実行するための財源確保にも、やはりNFTが絡んでくるのでしょうか。

善井:そうですね。計画は作れても、「お金をどうするのか」がずっとボトルネックになるからです。

本来は宿泊税などで財源を確保できればよいのですが、この場合は行政が動かないと進みません。一方でNFTを活用すれば、自分たちで発行して資金確保が実現します。

特に、デジタルノマドのように長期滞在してくれるインバウンド層に対して、国境を越えて訴求・販売する手段としてNFTは非常に有効だと考えており、2026年度から本格的に実装していきたいと思っています。

編集部:善井さんの取り組みは、全国で悩むDMOにとっての希望のモデルケースになりそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビューを終えて

全国各地にDMOが設立されてから10年以上が経過した今、形骸化した組織構造や、財源確保の限界が浮き彫りになっている。

そうした中、南城市や那覇市、七尾市で検討が進められている「NFTを活用した自主財源の確保」と「民間主導の組織体制への移行」は、まさに地方創生におけるブレイクスルーとなる可能性を秘めている。
Web3のテクノロジーは、単なる資金調達のツールにとどまらず、地域住民と世界中のファン(観光客)を直接つなぎ、その地域に真の豊かさをもたらすためのインフラになり得る。

全国のDMOが自立し、地域ならではの魅力を世界へ発信していくための「新たな武器」として、NFTがどのような変革をもたらしていくのか、今後の展開から目が離せない。

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