ブロックチェーン技術の登場により、NFTを活用したデジタルアート市場が活発化しています。
その結果、多くのデジタルアート作品の売買、新たなクリプトアーティストの誕生、アーティスト支援への新しい関係構築が起こっています。
この記事では、そんなアート分野でのNFT活用事例をご紹介します。
【NFT×アート】国内でのNFTアート活用事例10選
土佐尚子
特設サイト:https://artnft.herokuapp.com/naokotosa
リリース時期:2021年3月
販売場所:NFTマーケットプレイス「OpenSea」
2021年3月24日、最先端技術を使った日本文化の表現をテーマにしている芸術家、土佐尚子が制作した映像作品「Sound of Ikebana:音のいけばな」のオークションがオンライン特設サイト上で実施されました。
この作品は1/2000秒で撮影されたものだそうで、作品の長さは30秒。
用意されたのはたったの一点。とても貴重な作品となりました。
コロナ禍を生きる母子、そして医療従事者への感謝と支援の意思表示として、「命輝く未来社会」をテーマに制作された、この「世界にたった一つのいけばな」のオークション収益の一部は、医療機関に寄付されたそうです。
せきぐちあいみ
リリース時期:2021年3月
販売場所:NFTマーケットプレイス「OpenSea」
2021年3月25日、VRアーティストであるせきぐちあいみさんのNFTアート作品「Alternate dimension 幻想絢爛」が、大手マーケットプレイスのOpenSeaで、日本円にして約1300万円で落札されました。
この作品は、せきぐちさん初のNFTアート作品で、この後にも「Messenger of God 【Kitsune】」、「鏡花水月シリーズ」など、さまざまなNFTアート作品を出品。いずれもOpenSeaにて高額で取引されました。
GenerativeMasks
HP:GenerativeMasks公式HP
リリース時期:2021年8月
販売場所:NFTマーケットプレイス「OpenSea」
2021年8月17日、GenerativeMasksは、「ジェネレーティブアート」と呼ばれるNFT10,000個を、OpenSeaにて販売しました。
これがなんと販売開始からおよそ2時間で10,000個全てが完売してしまい、600万ドル(約6億円)以上のボリュームを生み出したとのこと。
このNFTの着目すべき特徴は、表情の異なるユニークなマスクを1つずつ自動的に「生成」し、NFTマーケットプレイスにてリロードするたびに異なる色のマスクを楽しめるという点に他なりません。
DappRadarのデータによると、これまでに3,000人以上がGenerativeMasksを購入。二次流通を合わせると12,000以上の取引が行われ、一部のマスクはすでに複数回所有者が変更されている(譲渡されている)そうです。
RTFKT×村上隆
HP:RTFKTスタジオ公式HP
リリース時期:2021年11月
販売場所:NFTマーケットプレイス「OpenSea」
2021年11月、村上隆が、デジタルスニーカーやバーチャルウェアを販売しているデザイン集団「RTFKTスタジオ」のNFTプロジェクト「アバター・プロジェクト」に参加しました。
今回のプロジェクトで村上氏とRTFKTスタジオは、デジタル生成された2万体の3Dキャラクター(アバター)を制作。村上氏は、キャラクターの目や口、ヘルメット、服などのデザインを担当したとのことです。
歴代最高落札価格は289ETH(1億4450万円)でした。
コムロタカヒロ
リリース時期:2021年11月
販売場所:XYZA
2021年11月12日、クリプトアートマーケットプレイス「XYZA」にて、現代アーティスト・コムロタカヒロによる「WORMHOLE」プロジェクトの第1弾が始動しました。
誰もが無料で入手できる第1弾「AIR DROP」は、コムロタカヒロがデザインした4色の「TkoM GEM Mining」が11月12日から72時間限定で抽選配布されました。
また、第2弾「Dragon Series DROP」では、木彫作品「Dragon」シリーズのオリジナル3Dデータをもとに作成された4種類の「Dragon」のデジタルスカルプチャーをNFTで先着販売。
第3弾「HYDRA DROP」では、イーサリアムの値動きにあわせて動きが変わる自律反応型アニメーションスカルプチャーで不死身の怪物「HYDRA」を、オークション形式で販売しました。
これらの作品は、Zora、Openseaにてセカンダリー販売が可能です。
花井 祐介
HP:FWENCLUB公式HP
リリース時期:2022年2月
販売場所:NFTマーケットプレイス「OpenSea」
2022年2月14日、デジタル&フィジカルプラットフォーム FWENCLUBから、花井祐介氏の初NFTコレクション「People In The Place They Love」1000個をリリースしました。販売直後こちらの作品は即時完売したとのこと。
2月14日より大手マーケットプレイスの「OpenSea 」で取引が始まり、2月17日には総取引額が708イーサリアムにまで上りました。
フロアプライスで見積もると、1,000NFTの総額は6,000イーサリアムに相当します。
さらにこのNFTは、SOL (BIGBANG) 、Wilson Chen Bolin (台湾人俳優)、 Kevin Ma (Hypebeastファウンダー)など多数のグローバルな著名人が所有しており、国内でもVerbal (音楽プロデューサー兼 Ambush CEO)、清永浩文 (SOPH.代表)、黒木啓司 (EXILE) 、関口メンディ (GENERATIONS from EXILE TRIBE)らが次々と自身のSNSにで次々と自分のアバターを投稿しました。
Backside works.
HP:1BLOCK 販売ページ
リリース時期:2022年2月
販売場所:NFTマーケットプレイス「OpenSea」
2022年2月22日、日本初のデジタルファッションレーベル1BLOCKが、アーティスト「Backside works.」とのコラボレーションをしたバーチャルスニーカーがNFTとして発行されました。
販売開始時間: 2022年2月22日(火) 21:00(JST)
販売終了時間: 2022年3月1日(火) 20:00(JST)
このNFT作品は、「ストリート×カルチャー」の融合を実現した、世界にただ一足だけのバーチャルスニーカーです。最終的な落札価格は、2.176ETHとなりました。
MAGO Mint
リリース時期:2022年8月
Discord:MAGO Mint
販売場所:NFTマーケットプレイス「OpenSea」
社会活動家・アーティストである長坂 真護氏は、自身がこれまで行ってきたガーナのスラム街「アグボグブロシー」の問題を解決する手段の一つとして、NFTプロジェクト「MAGO Mint」をリリースしました。
本コレクションは、限定300枚の写真作品からなる1点として同じ作品が存在しないNFTアートとなっており、すべてニューヨークの路上を映し出した写真となっています。
「MAGO Mint」の売上の一部は、ガーナのスラム街に最先端のリサイクル工場を建設する目的を達成するために投資されるとのことです。
また、本NFTのの購入者は、「discord」コミュニティに参加することができます。
8月より大手NFTマーケットプレイスの「OpenSea 」で取引が始まり、総取引額が46ETH(1000万円相当)を超える取引が行われています。
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山梨県立美術館メタバースプロジェクト
公式HP:山梨県立美術館
リリース時期:2022年11月30日
山梨県立美術館では、株式会社Psychic VR Lab、COMPOUND合同会社の協力のもと、メタバース活用プロジェクトを開始する予定です。
2023年2月末に予定されている本格稼働に先立ち、2022年11月30日からプレオープンとして、株式会社Psychic VR Labの提供するリアルメタバースプラットフォーム「STYLY」上で『大 BUDDHA VERSE展』が開催されています。
『大 BUDDHA VERSE展』は、山梨県出身の現代美術作家たかくらかずき氏による作品シリーズ『NFT BUDDHA』と『YOKAIDO』で構成されており、NFTアートによるキャラクターシリーズ、物質性を伴う現代美術作品、3D彫刻、映像作品、アバターなどの作品展開がされています。
東村 アキコ
特設サイト:https://adam.jp/stores/1st_higashimura_akiko
リリース時期:2022年11月
販売場所:Adam byGMO
2022年11月21日、『東京タラレバ娘』『海月姫』など多数のヒット作を生み出している漫画家、東村アキコ氏が、日本最大級のNFTマーケットプレイス「Adam byGMO」にて、第一弾となるNFTアート作品群「NEO美人画2022」を発表しました。
作品のテーマとして、日本の美を美しく描いただけでなく、コロナ禍の現在をウィットある画風に納め、東村アキコの拡張された芸術的世界観を表現しています。
また、各現代アート作品に東村アキコが書き下ろしたオリジナルの詩が付随し、一つ一つに独自のストーリーがあり、漫画1本分と同等のストーリーを込めた作品となっています。
本作品の発表に合わせて、2022年11月22日〜11月27日にリアル世界でNFT作品を鑑賞できる東村アキコNFT「NEO美人画 2022」展が、青山にあるスパイラルガーデンにて開催されました。
【NFT×アート】国外でのNFTアート活用事例4選
Beeple
HP:Beeple公式HP
リリース時期:2021年3月
販売場所:CHRISTIE’S
2021年3月11日(現地時間)に、デジタルアーティストであるBeepleが5000日間(約13年間)かけて制作したデジタルアート作品「Everydays – The First 5000 Days」がオークションハウスChristie’sにて約75億円で取引されました。
この取引で「NFT」を知った人は多いかと思いますし、この取引によりNFT×アートの可能性が可視化され、多くのアーティストがNFT作品を出品するようになりました。
この作品の落札者は、世界最大のNFTファンド「Metapurse」創設者・Metakovan(メタコバン)氏。「Metapurse」は2020年にもBeepleの作品《Beeple Everydays: The 2020 Collection》の初版セットをすべて購入していたとのことです。
ダミアン・ハースト
HP:https://currency.nft.heni.com/
リリース時期:2021年7月
販売場所:HENI NFT
2021年7月、イギリス人アーティスト、ダミアン・ハーストがNFTアート作品「The Currency」(通貨)をリリースしました。
このNFTアート作品は、カラフルなドットが印象的な10000枚の手描きA4サイズの作品。この作品は偽造防止のために、それぞれにホログラムイメージ、サイン、マイクロドット、そしてシリアルナンバーの代わりに小さな個別メッセージが施され、まるで「貨幣」のような仕様になっています。
すべてが似たデザインになっていて、ある作品が他の作品よりも優れている、劣っていることはない。10000点すべての作品が「貨幣」のように平等であるということです。
先ほど「手描き」と伝えましたが、購入者は必ずしもこの物理的な作品を入手するわけではないのです。これはどういうことでしょうか。
このNFT作品を購入した1年後、購入者は「物理的な作品と交換してNFTを手放す」のか、「NFTを保持して物理的な作品を破棄する」のか選択を迫られます。決して両方は所持できません。どちらを所有するかはコレクターの判断によるということです。
バンクシー
リリース時期:2022年1月
販売場所:CHRISTIE’S
2022年1月10日、バンクシーの絵画「Love Is in the Air(2005年)」が、10000個のNFTとして出品されました。
この作品、同じアートが10000個複製されているわけではありません。
なんとデジタル上で1つのアートが10000個に分割されているんです。1つあたり約1500ドル(約17万円)で販売され、一つひとつが作品のどの位置のものかを示すコレクターカードも付属しています。
販売されたものは、他のNFTマーケットプレイスで二次流通することも可能です。
レオナルド・ダ・ヴィンチ
リリース時期:2023年2月
販売場所:ElmonX
レオナルドダヴィンチの名作、モナリザがNFTとして販売されました。英国のNFT制作会社ElmonXは、複製ライセンスを提供する会社「Bridgeman Images(ブリッジマン・イメージーズ)」と提携して、公式に認められたNFTのモナリザの制作、販売を行いました。
モナリザオリジナルエディション(約24,600円)とモナリザアーティストプルーフエディション(約146,700円)の2種類のコレクションが発売されており、現在はOpenSeaから購入することが可能です。2023年3月時点のアーティストプルーフエディションのフロア価格は55ETH(約1,230万円)となっています。
NFTの購入者はモナリザをARで表示して作品を楽しむことができるほか、アーティストプルーフエディションの所有者には、NFTとシリアルナンバーによって紐づいたフィジカル版のモナリザの複製を入手できる特典もあったようです。
最後に
本記事では、数々のアート業界におけるNFTの取引事例をご紹介させていただきました。
NFTが話題となった約一年前ごろは、現代アートサイドからは少しNFTに抵抗を感じていたような気がします。
しかし、最近では花井祐介氏や村上隆氏のNFTへの参入により、抵抗感がなくなってきたのではないでしょうか。
これからも、アート業界に関わらず、NFT分野に参入してくる業種・業界は増えてくると思います。
NFT Mediaでは、様々な業種・業界のNFTの活用事例、取引事例をご紹介しておりますので、ぜひこちらもご覧ください!
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